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声の事典
【声の事典】
CONTEXT ○発声のメカニズム |
<声の事典>
○発声のメカニズム 口から食道に通じる食物の道と、鼻から気管に通じる空気の道は、のどの奥にあたる咽頭で交差しています。この咽頭から気管に向かう空気の取り入れ口が喉頭です。喉頭は、軟骨によって囲まれています。男性では、喉頭の軟骨の一部が屑の前面に飛び出してのどぼとけを作っています。 喉頭の内腔は前庭ヒダ、声帯ヒダという二組のヒダが壁の両側から張り出して、せばめられています。声帯とヒダのなかには、声帯靭帯および声帯筋が入っています。声帯ヒダの間の隙間を声門裂とよびます。喉頭には、4種類の小さな軟骨と軟骨を動かす小さな筋があり、声帯筋もそのひとつです。これらの筋が、声門裂の幅を変えたり、声帯の緊張を変えたりします。声門裂をせばめ、急に空気を吐き出すと、振動して声が生じます。(図)
○気管、気管支、肺胞 空気の通り道はどうなっているのか 喉頭から肺に向かう気管は、食道の前を下り、心臓の後方で左右に分かれます。枝分かれまでの部分が気管で、左右に分かれてから先を気管支といいます。気管支は、肺の中で木のように無数に枝分かれし、その先に、肺胞がブドウの房のようにつながっています。気管支の細かい枝から肺胞にかけては、壁の構造がしだいに変わっていくので、細気管支、終末細気管支、呼吸細気管支、肺胞管といった名前がつけられています。 気管や太い気管支の壁は、大部分が軟骨によって囲まれ、残りは結合組織や平滑筋からなっています。気管支が肺の中に入ると、壁を作る軟骨は次第に小型になって平滑筋で包まれるようになります。さらに気管支が細くなると、軟骨は失われてしまいます。 気管、気管支の内面の粘膜は、線毛の生えた上皮細胞で覆われています。また粘膜には、粘液を分泌する細胞や腺が備わっています。粘液に捉えられた小さな異物や細菌は、上皮細胞の線毛の働きで、咽頭に向かって送られます。また気管支の粘膜には、免疫グロブリンが分泌されて、細菌などの感染を防いでいます。 一方、肺胞の壁は、きわめて薄くできています。それぞれの肺胞の内面を平たい肺胞上皮細胞が覆い、その間に毛細血管とごくわずかな結合組織がはさまっています。 また、肺胞という空気の入った袋は、表面張力によって縮もうとする傾向があります。シャボン玉を膨らませた途中でストローから口を離すと、シャボン玉が縮んでしまうのと、同じ力です。この表面張力の力を弱めるために、肺胞の壁には、界面活性物質を分泌する細胞が備わっています。 界面活性物質というのは、セッケンのような物質で、表面張力を抑える働きがあります。ツマヨウジなどを水面に浮かべて、その横にセッケン水をたらすと、ツマヨウジがセッケン水のない側に引かれます。つまり、界面活性物質は、表面の面積を縮めようとする力が弱いので、ツマヨウジが引かれるのです。肺胞でも、同じしくみが役立っているのです。 ○胸郭と胸膜 肺は、表面も肺を収める胸の壁の内面も、胸膜という滑らかな膜で覆われています。肺と胸壁の間の隙間を、胸膜腔といいます。胸膜腔には、わずかな液が入っているだけです。肺と胸壁の表面はぴったり接しているのです。 肺の表面のうち、身体の中心部に向いている胸膜に覆われていないところがあります。そこを通って気管支や血管が肺に出入りしています。この部分を肺門とよびます。肺の表面を覆う胸膜は、肺門のところで折れ、胸壁の内面を覆う胸膜につながります。つまり、肺は肺門のところを茎にして胸膜腔の中にぶら下げられた形になっているのです。 ところが、肺は、呼吸運動の際に、胸壁の内面にそって滑るようになっていると、胸腔の広がりにあわせて形を変えられます。肺の表面と胸壁の内面が滑らかなので、呼吸運動の際に、肺は無理なく広がったり縮んだりすることができるのです。
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