集中力を強化する 60のヒント (やる気の起きないときのモティベートのかけ方、テンションを高めるには) |
「なぜ人間は集中力をものにしたのか」
人間が動物と違うのは、高度な認知能力や思考力をもつことですね。そのためには、かなりの注意、集中力を必要とします。
動物には、それほど一つのことにかまっている時間はありません。集中力がないということを気になさる皆さんの中には、集中力のある方がよいという考えがあるのは否めません。「集中力がない」「集中力が散漫だ」と注意されるときは、決してよい評価が与えられたわけではありませんね。動物は、いつも危険にさらされているので、常に身辺に注意して見張っていなければなりません。かわいく弱い動物ほど、キョロキョロと落ち着きなくみえますね。食べることや眠ることに集中すると殺される危険が高まるからです。これは敵に対してだけでなく、群れの中にいても同じです。
動物の社会には位があるので、他者に気遣わずにはいられません。人間の場合、火や武器の使用が外敵への危険を減らしたのは確かです。群れでの気配りはどうでしょうか。長谷川眞理子さんの著書「ヒト、この不思議な生きものはどこから来たのか」によると、人間は、他の霊長類に比べ、平等であるらしいのです。少なくとも採集狩猟生活時期においては、それほど他人に注意を払わずともよかったそうです。
その理由もいくつかあげられていますが、他人の心を慮る能力、眼、まなざしを読む力などを身につけたからというのも、その一つだそうです。これが人間固有の能力らしい、自我、自意識、自己と他者の区別ができることに起因するとあります。
このように考えていくと、集中力のある人は、動物や子どもの集中力のなさに比べ、大人であり、より人間らしい高度の能力が備わっているといえなくもないわけです。
はじめに「人生や仕事に成功するのに一番大切なものは何ですか」あるインタビュアーにそう聞かれたとき、私は「それは集中力ではないでしょうか」と答えたときがありました。
私自身、あまり意識はしてこなかったのですが、多くの人といろんな仕事や活動をすると、必ず結果がでます。そこで結果としてうまくいった人とのプロセスをふりかえると、そうではなかった人とどう違うのかがわかります。その人に集中力があったかどうか、その仕事に集中力を発揮したかどうか、これは決め手になるように思いました。他人のことばかりいっておられません。私自身、うまくいったときは、かなりの集中力を発揮してきたように思うのです。新しい経験、大きな仕事、そういうものになると、否応にも集中力を必要とされるように感じることも度々あったからです。
こうして生きてくると、新しく何かをやる人に会うと、うまくいくかどうかが勘として働くようになります。プロやアーティストをめざす多くの人と接してきた私には、数打てば当たるではありませんが、そういう判断について間違うことが少なくなってきたのは確かです。
人をみるときの、第一の要素として、集中力というのが欠かせないと思っています。
「集中力だけは、誰にも負けない」そう確信できた人が、世の中でも成功しているとみても、あながちおかしくはないでしょう。
私自身、現在は、仕事の時間量はともかく、年間にあげている仕事量は、かなり多いと思っています。しかも、いくつもの分野にまたがっています。唯一の武器は、いろいろとあったはずでしたが、今や集中力だけかなと思っています。
そして、より大きなことを成し遂げている人、イチローや松井などをみると、もっと集中力があるのだなと、妙に納得してしまうのです。しかも、そのような成功者たちは、つねに“集中すること”について語っています。
本テキストは、私自身の集中力に対しての考え方を中心に、うまく世の中に集中力を発揮できていない人に、集中力の引き出し方を述べました。
集中力については、多くの類書もありますが、集中力の専門家は、人生や仕事で成功している人ともいえるわけですから、ここでは、現場で実践できる方向に絞り込みました。
つまり、集中力をつけるための方法だけでなく、集中力を仕事や芸事に生かす方法、さらに集中力を仕事や人生から引き出し、パワーアップしていくためのものとして述べました。類書によくあるパズルや目のトレーニングなど、めんどくさいものはとりあげませんでした。 そんなものはそう感じるだけで、却って本当の集中力を阻害してしまいかねないと思うからです。
それがうまくできたからといって、大して仕事や人生に対してプラスになる能力にはなるとは、思えません。つまり、時間と頭のムダです。少なくとも私はそう思うのです。もちろん、多くの方法が紹介されているからには、それが役立つ人もいるのでしょうが、集中力をつけることより、集中力をどう使うのかから、そのために必要なことを考えるべきだと思うからです。誰でもあてはまる、やりやすい方法ほど、概して大体の人に自己満足とチェック(確認)の機能しかないものです。集中力をつけるのに、決まったやり方はないのです。
あなたがあなた自身を知ること、そして、それをうまく発揮させる手順をつけていくこと、この2つが、集中力ということを通じて、あなたに伝えたいことです。