ヴォーカル、ヴォイストレーニングQ&A |
[10]歌とステージング |
「よくヴォーカリストの○○に似ている」といわれたり、楽しいステージだといわれるのですが、レベルの高いバンドの人からは「歌がつまらない」、「何を歌っても同じようにきこえる」と言われることもあります。何をどのようにしたらよいでしょうか。 | |
A078 これは初心者にありがちなことです。特に「○○に似てるね」と、誰かに似てると言われるのは、「それ位うまいのかァ」と自尊心をくすぐられ、うれしいものです。でも喜んではいけません。歌い回しというのは誰にでもクセがあります。そのクセの部分がその人だけのオリジナルのような部分です。「歌手の誰かに似ている」というのは単に、そのクセのつけかたの部分が似ていることなのです。この場合も、あるヴォーカリストのクセを知らず知らずのうちにマネしているとみてよいでしょう。また「歌がつまらない」と言われるのはそのクセ以外に聞くに値する部分がほとんどなくて、楽譜通りに声を出しているだけ、という状態なのでしょう。 |
今度、はじめて人前で歌います。まだマイクの使い方がうまくありません。マイクを扱うときに気をつけることを教えてください。 | |
A079 マイクは、口もとから少し離して持った方がよいでしょう。その方がマイクやステージの機器の違いによって、大きく音声が変わってしまう危険がないからです。 |
ステージをやっているのですが、どうも、曲の間のMCや、間合いをもたせることが苦手です。MCについてアドバイスがありましたら、よろしくお願いします。 | |
A080 MC(Master of Ceremony)は、音楽業界ではステージで曲の合間のおしゃべりを指します。もともとは司会者という意味でした。バンドでは当然、ヴォーカリストがこの大役を担うわけです。MCを使うときは、だいたい次のようなときです。 (1)ステージの構成上、少しおしゃべりがほしいとき (2)前の曲、もしくは次の曲の説明が必要なとき (3)ステージの雰囲気や流れを変えたいとき (4)バンドのメンバーの配置替えや交替、ギターやベースのチューニングなどで、間を もたせなくてはいけないとき (5)ステージの最初やエンディング、幕の前後など、一区切り必要なとき (6)観客との親密度を深めるため、直接何かを話したいとき (7)ステージにプラスアルファ、おもしろさをくわえたいとき (8)次回のステージやレコードなどの宣伝をするとき (9)歌い切って一息つくとき (10)ギターの弦が切れたなど、不意のトラブルで間をもたせるとき ただし、へたにMCを多用するとせっかくのステージの流れを壊したり、歌を聴きに来ている観客の気持ちをそぐことになりかねません。バンドのパブリックイメージさえ、壊してしまうこともあります。 やってはいけないMCもあります。 ○まとまりなく、だらだらとした話 ○聞いている人の一部しかわからない話 ○やる気のなさが出たり、疲れたなどという言葉 ○他のバンドの悪口 ○観客に関することのミス、地名のミス ○ステージの流れとかけ離れた話 ○差別用語、人を傷つける言葉 ともすればうっかり口にしてしまう様子もたくさん含んでいますから気をつけましょう。 MCは、自分たちのバンドのステージのスタイルを考えて、少しずつ取り入れて観客の反応を見ながら慣れていくしかないでしょう。歌と同じくらいにヴォーカリストの個性がでますし、ステージの演出にも効果的ですから、やはりプロとしてのMCができるように勉強するべきだと思います。 |
ステージでの心構え、気をつけることを教えてください。また、ステージとヴォイストレーニングとの関係を教えてください。 | |
A081 ステージでは、必ず視線を観客の目に合わせることです。やや後方の真ん中の人を見るつもりでよいでしょう。きょろきょろするのは、みっともないのでやめましょう。 ステージでは観客の反応や自分たちの演奏に集中し、歌では歌うことに専念します。 |
僕は、オリジナル曲を歌っていきたいと思っています。どういう曲がオリジナルとしてよいのでしょうか。また、ヴォーカリストにとってのオリジナリティということがよく言われますが、そのこととあわせて、オリジナリティについて、教えてください。 | |
A082 最近では、私のところに皆さんが持ってくる曲は、ほとんどがオリジナル曲と称されるものです。作詩作曲を学んで、高性能かつ安くなった楽器を利用して、手軽に皆さんが曲を作っているのをみると、日本もようやく音楽文化を語れる時代になりつつあるのかと思われます。ひと昔前は欧米アーティストのコピーばかりだったのに、今や、誰もが自分たちのオリジナルを追求し始めました。こういうところから、明日のロック界を背負って立つヴォーカリストが生まれてくるのだろうと思います。 バンドは、自分たちの曲で勝負しなくてはいけない時代のようですから、シンガーソングライターや作曲家がバンドの中に生まれてきたのは、何をおいてもよいことです。 しかし、立場を変えて聴くと、ちょっとヴォーカリストの力量と無関係に作っているのではないのかと思いたくなるものが多いのです。それと、すでに世に出てレコードをリリースしているバンドの亜流のような曲が多すぎます。きっと、憧れのバンドの曲の余韻ばかりしか、頭の中にはないのかもしれません。 作曲作詩講座のコード進行表通りに、歯の浮くような歌詞をつけたものも少なくありません。特に、詞のセンスの悪いのは相変わらずです。これは日本の歌の宿命と思わず、何とかがんばって欲しいものです。 要はオリジナルといっても形式だけで、内容がさっぱりないものが多いのです。ヴォーカリストもこちらに見えないし、何をどのように歌っていこうとするのか、バンドの姿勢もわかりかねます。 世界で何万もの曲が出ている中でヒットした曲、あるいは、ワールドチャートのランキング100に入った曲と、あなたが数10曲作った中の1曲も、同じ1曲なのです。 オリジナルというなら、自分たちの音楽が何に根ざし、どういうところにあるのかをしっかりと捉えた上で、自分たちのバンドならではの曲を作らなくてはならないはずです。そうでなくては、オリジナルとはいうものの、単に自分が作ったというだけに過ぎなくなります。表現されるオリジナリティがどのくらいあるかということが大切なのです。ヴォーカリストしだいでよくも悪くもなるとはいえ、その前に、本当にヴォーカリストやバンドの個性を生かす曲づくりをしていることが大切です。 人と違うことをやるのがオリジナルと思っているのは、単なるコピーバンドと同じです。人と同じことをやりながら、そこに埋もれるどころか逆にその人らしさが光る、というのが本当のオリジナリティというものでしょう。 本物のヴォーカリストは、何を歌っても、曲や歌の中にその人が埋もれてしまわないで、その人がそこに存在しているパワーが感じられるものです。その人が曲と一体になって出すパワーに人は心を打たれるのです。このパワーの源がオリジナリティなのです。 オリジナルにこだわるなら、世界にはたくさんのよい曲があります。それをオリジナルに歌う練習が一番力がつくと思います。 |
コピーバンドをやっています。歌を一曲マスターするための練習方法を教えてください。 | |
A083 (1)歌詞を別の紙に書き写す。 |
ステージに出るたびにあがってしまい、本領を発揮できずにいつも悔しい思いをしています。どうすればあがらずに歌えるでしょうか。よい方法を教えてください。 | |
A084 人前に立つときと自信のないものをやろうとするときは誰でもあがるものです。この二つが共にそろっているのがステージですから、あがらないほうがおかしいと思えばよいのです。 <あがり防止対策> |
歌うまえのウォーミングアップの方法を教えてください。プロのヴォーカリストは本番前にどのようなことをやっているのでしょうか。 | |
A085 これもトレーニングとステージとでは条件が違ってきます。歌うまえに基本的にやっておくことは、体を動かし、全身を柔らかくしておくということです。少し、汗をかくくらいの方が、トレーニングにも入りやすいし、声も出やすくなります。息を吐いたり、声を軽く出して発声練習をしている人もいます。 |