ヴォーカル、ヴォイストレーニングQ&A |
[4]発音/言葉(母音) |
ヴォーカリストとして、メロディやリズム、音程のトレーニングをしています。言葉にもトレーニングはあるのでしょうか。また、言葉のトレーニングは必要なのでしょうか。 | |
A030 言葉のトレーニングは、役者、アナウンサー、その他にも言葉を使う仕事についている全ての人々が行っているトレーニングです。ところがヴォーカリストはほとんど、このトレーニングしていません。音楽スクールでも、言葉のトレーニングには、無関心のようです。これは大きな間違いです。歌は、音楽を演奏することにおいては他の楽器とかわりませんが、それだけでなくメロディーに“言葉”をのせることができるのです。ヴォーカリストが歌を歌うということは、言葉をメロディーにのせて語りかけるということです。ヴォーカリストにとって言葉はとても大切な要素なのです。 <言葉のトレーニング> |
歌っていても、言葉がわからないといわれることがよくあります。もごもごと口のなかでこもってしまったり、言葉がはっきりとしないようなのです。言葉がはっきりしないのを直す方法は、どうすればよいのでしょう。 | |
A031 まず、口をしっかりと動かし、開けることです。そうしないと声は前にでません。あるいは逆に、言葉をはっきりと言おうとしてむやみやたらに口を大きく開けすぎていないかを考えてみてください。口をいくら大きく開けてもムダに大きく開けている場合には、かえって平べったい口先だけの声になり、実際に使いにくい声になります。歌のための発声ですから、お腹から声を出すのが基本です。試しに口先はあまり開けずに、口の中を開ける感じでAIUEOとお腹を意識しながら声を出してみてください。少しこもった感じになるとは思いますが、口を開けているときより、口の奥の方でしっかりと共鳴しているのがわかるでしょう。 始めから、すべての言葉をはっきりと発音しようとしすぎると、口がパクパクするだけで、音程をとってメロディーにのせるだけで精一杯となり、本来の言葉の持ち味やイントネーションを生かせなくなることが多いようです。 ですから、個々の音の訓練をするとともに、体の底から言葉を言ってみることをトレーニングすることです。体から言葉が言い切れるというのがヴォーカリストの基本だということを忘れないでください。早口言葉のような練習も、それをふまえた上でなければ効果はありません。まずは深くひびきのある声を出すことの方に重点を置いてトレーニングを行ってください。 <言葉をはっきりとさせるためのトレーニング> |
私の声は固いので、よくハミングをするトレーニングをするように言われます。ハミングというのは、何となく声にはならないのでトレーニングがうまくできているのか不安です。ハミングのトレーニングはどうするのか、気をつける点などを教えてください。 | |
A032 声帯を、正しく合わせ、振動を自由自在にコントロールさせる訓練として、ハミングは大変、効果的なトレーニングといえます。ハミングは長時間トレーニングを続けても、喉を痛める危険が少ないので調子の悪いときでも、充分にトレーニングできます。 <ハミングのトレーニング> |
私はヴォーカルをずっとやっていますが、今だに発音がよくないとか言葉が何を言っているのかよくわからないといわれます。歌っているときには気をつけているのですがどうしたら直りますか。 | |
A033 他の人に正確に伝わる“明瞭な発音”には、1.唇の運動能力2.あごの運動能力3.舌の運動能力4.喉(声帯)の運動能力、この4つが全てスムーズに作動していなければなりません。しかし、話すときも歌うときも、いつでも、これらに注意しているということは、頭が重くなってしまうでしょう。却って明瞭な発音をしようとすればするほど、ふしぜんになってしまいがちです。これは体の余分な部分に力が入ってしまい、うまく動かなくなるためです。 <唇のトレーニング> |
僕は歌っているときに舌がうまくまわらないときがあります。いつも舌足らずの感じになります。発声練習をやっていてもうまくいきません。 | |
A034 舌足らずの声も不明瞭に聞こえる声の一種です。まずは、唇のトレーニングを充分に行ってください。それから、舌のトレーニングをやりましょう。 <舌のトレーニング> |
速いテンポの曲を歌うとき、言葉がうまくついていきません。早く口がまわらなかったり、言い間違ったりします。うまく言えたときも、急いで言っているように聞こえ余裕がありません。 | |
A035 言葉を話すときに、口を開けすぎてはいませんか。唇やあごの運動にエネルギーを多く使うと、言葉にするときに喉、舌の運動にエネルギーや気持ちがいきません。バランスよく、喉、舌、唇、あごの4つの運動機能が働いているかをチェックしてください。Q030から挙げてきたトレーニングを充分に練習してください。 <言葉のトレーニング> |
私は、ヴォーカリストですが、とにかく、もの覚えが悪く、肝心の詞が覚えられなくて困っています。覚えたと思っても、すぐに忘れてしまいます。どうしたら、恥をかかなくてすみますか。 | |
A036 意味がわからないまま歌詞を暗記するのは難しいし、一度覚えてもすぐに忘れてしまいます。そのヴォーカル科の大まかなストーリーを頭に入れておくのが歌詞を覚えるコツです。歌詞の意味を充分に考え情景を思い浮かべながら覚えていくようにすれば、ストーリーを追うことによって、言葉がしぜんと出てくるようになります。その際、歌詞はメロディと一緒に覚えるようにしましょう。前奏が始まったらしぜんにメロディと共に言葉が出てくるようになるまでがんばってください。 <詞を覚える練習> |
私は田舎から出てきて、まだ、なまりが直りません。歌っているときにも、ときたま、方言が出ているようで、歌ってからよく指摘されます。アクセントも迷うことが少なくありません。 | |
A037 方言が直らない、アクセントが正しくないことをあまり気にしすぎないようにしてください。それもあなたの個性になります。 <言葉を正しく発音するトレーニング> |
日本語で歌うのがとても苦手です。外国語もうまくないし、日本で歌っていきたいので、日本語でしっかりと歌えるようになりたいのですが、よい勉強法はありませんか。 | |
A038 日本語は、歌としては扱いにくい言葉です。口先でも適当に発音できてしまう言語ゆえに、使い手は深みのない発声に慣れてしまいます。多くの人がイやウの発声でうまく声が出ないのも、普段のままの発声で歌おうとしているからでしょう。そんなわけで、日本語を正しい声の出し方で歌おうとすると、かなり意識的に努力することが必要になります。充分な声域や声量がとれず、言葉も途切れ途切れになってメロディにのりにくいのです。 <音楽的日本語のトレーニング> |
私は長い間ずっと英語で歌ってきました。発音などは、そんなに悪くないと思っています。しかし、いつも こらのヴォーカリストに比べて、パワーや勢いが劣る気がするのです。特に英語自体も何だかとても違うようなのです。どうしてなのでしょうか。もっと英語らしくきこえるためのコツを教えてください。 | |
A039 日本人のヴォーカリストで英語で歌っている人たちの歌い方をみると、何となく口先で英語を器用に発音しているだけのように感じます。プロの人でもほとんど、英語らしい雰囲気を出して聴かせているだけといってもよいでしょう。 英語は、強い息を、舌や唇で音とするような言語です。そのため、日本語にない種類のパワー、勢いといったものがあるのです。ひいては、それがヴォーカリストの理想でもある深みのあるしぜんな発声につながるのですが、洋楽のコピーをやっている日本人ヴォーカリストで、その最も根本的な部分までマスターしている人はどれだけいるのでしょうか。発音を聞いたまま、口先でまねているだけで、実はかなり日本人的な英語、カタカナ英語で歌っている人がほとんどではないでしょうか。それではいつまで経ってもあなたが目指すところの「英語らしさ」は出ません。 小手先のテクニックでこまかすよりも、しぜんな発声を身につける基礎トレーニングを積むことが、最終的には外国人ヴォーカリストと対等に渡り合える実力につながるのです。ですから、体からの深い息をなるべく深いところで声にするトレーニングを続けることです。 他の国の言葉ですから、たとえ歌であってもそれを母国語としている人と同じレベルに使いこなそうとするためには、相当、使い込んでいかなくては、いけません。 人前で歌う以上、やはり本当に英語らしい英語で歌うように努力していくしかないでしょう。言語は、単に発音の問題だけではありません。留学や旅行の体験や外国映画などから広く学ぶことをお勧めします。 |